霧島茶の新茶の季節、八十八夜の頃になると、茶農家が毎朝の気温に神経をとがらせます。青々と伸びたばかりのやわらかい新芽は、一夜の霜で重大な被害を受けることがあるからです。今回は、茶畑を霜から守る技術を、一般的な知識としてご紹介します。

なぜ新芽は霜に弱いのか

霜害(そうがい)とは、気温が下がって植物の組織内の水分が凍り、細胞が壊れてしまう現象です。とくに春に伸びたばかりの新芽は水分を多く含み、寒さへの耐性が低いため、朝の放射冷却で気温が氷点下に下がると、一夜にして損なわれてしまうことがあります。せっかくの一番茶が大きな打撃を受けるため、霜対策は茶作りの大きな課題のひとつです。

防霜ファン:上空の暖かい空気を送る

多くの茶産地で見られるのが、茶畑に立つ背の高い柱の先についたファンです。これは「防霜ファン」と呼ばれます。よく晴れた風のない夜は、地面付近の冷たい空気と、上空数メートルの比較的暖かい空気の層に分かれます。防霜ファンはこの上空の暖かい空気を送り下ろし、茶の芽の周りの気温を数度上げることで霜を防ぎます。

散水氷結法:水が凍るときの熱を利用する

もうひとつ、一見矛盾したように見える技術が「散水氷結法」です。これは、霜が降りそうな夜にあえて新芽に水をまき続け、芽を氷で包んでしまう方法です。なぜ凍らせると守れるのか——鍵は「潜熱」にあります。

  • 水は液体から固体(氷)に変わるとき、潜熱と呼ばれる熱を放出する
  • 芽の表面で水が凍り続ける限り、この潜熱によって芽の温度はなんとゼロ度付近に保たれる
  • 周囲の気温が氷点下でも、芽自体は致命的な低温にならずに済む

つまり、芽を氷で覆うことで、かえってそれ以下の温度への低下を防ぐという、自然の物理を利用した巧みな方法なのです。

霧島のような高原産地と霜

霧島のような標高のある高原産地は、昼夜の寒暖差が大きく、これがお茶に深い旨みと香りをもたらす一方で、春先の放射冷却による霜のリスクとも隣り合わせです。どの霜対策をどう組み合わせるかは、畑の地形や水の確保、その年の気象によって産地ごと・農家ごとに異なります。いずれにせよ、春の一杯の裏には、霜の夜を越えて新芽を守る、目に見えない手間が重なっています。

霧島の土地とお茶

私たちの茶畑が広がる霧島の風土については霧島茶とはで、その茶を育てる仕事についてはお茶ができるまででもご紹介しています。

よくあるご質問

Q. 霜害はどの季節に問題になりますか?
とくに新芽が伸びる春先、遅霜(おそじも)と呼ばれる遅い霜が恐れられます。晴れた風のない早朝にリスクが高まります。

Q. 水をまいて凍らせて、茶は傷まないのですか?
水が凍る際に出る潜熱で芽をゼロ度付近に保つのが仕組みです。水をまき続けることが重要で、途中で止めるとかえって損害につながるため、技術と経験が求められます。

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