霧島茶の製造の最後に、香りを決める仕上げの工程があります。焙煎——私たちにとっては、お茶と交わす最後の対話のような時間です。強い火で焦がすのではなく、80〜130℃の低めの熱を、葉の状態を見ながらゆっくりとかけていく。この記事では、香ばしさが生まれる仕組みと、私たちの焙煎の現場をご紹介します。

なぜ仕上げに火を入れるのか

乾燥を終えた荒茶(あらちゃ)には、まだおよそ5%の水分が残っています。焙煎ではこれを2%まで落とします。わずか3%の違いですが、この3%が香りと余韻を大きく左右します。余分な水分を抜くことで保存性が高まるだけでなく、熱によって葉のなかに眠っていた甘い香りが引き出されていきます。

香ばしさの正体——メイラード反応

お茶を焙じたときのあの香ばしい香りは、一般にメイラード反応と呼ばれる現象によるものです。葉に含まれるアミノ酸と糖が熱によって結びつき、香ばしい香気成分を生み出す——パンの耳や焼き餅の香りと同じ仕組みです。温度が高すぎれば焦げ臭に、低すぎれば香りが立たない。焙煎とは、この反応をちょうどよいところで見極める仕事だといえます。

2台のドラム式焙煎機と、五感の判断

今村茶園では、2台のドラム式焙煎機を使って仕上げを行います。温度計の数字だけに頼るのではなく、焙煎機から立ちのぼる香りの変化を鼻で追いながら、焦げに向かう直前、甘い香りが立ちはじめる瞬間を見極めます。そして、雨の日や湿度の高い日には焙煎を行いません。空気中の湿気が仕上がりに影響するからです。葉の状態、機械の加減、その日の天候——すべての条件が調和したとき、はじめて甘く香ばしいお茶が仕上がります。

焙煎の香りを楽しむなら

焙煎の香ばしさをもっとも素直に楽しめるのが、茶葉をしっかり焙じ上げたほうじ茶です。カフェインが比較的少なく、食後や夕方の一杯にも向いています。煎茶でも、淹れたときにほのかに感じる火の香りは焙煎の仕事です。飲み比べていただくと、仕上げの違いがきっと伝わるはずです。

焙煎を含む製茶の全体像はお茶ができるまででご紹介しています。ほうじ茶や煎茶など、仕上げの違うお茶は霧島茶のラインナップからご覧いただけます。

よくあるご質問

Q. ほうじ茶と焙煎は同じことですか?
A. 焙煎は煎茶などすべてのお茶の仕上げに行う乾燥・火入れの工程です。ほうじ茶はさらに強めの焙煎で香ばしさを前面に引き出したお茶です。

Q. なぜ雨の日は焙煎をしないのですか?
A. 湿度が高いと茶葉が空気中の水分を拾いやすく、狙った香りと余韻に仕上がらないためです。条件の整った日を選んで焙煎しています。

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