霧島茶を育てる私たちの茶畑では、収穫が近づくと、畑一面に黒い覆いがかけられます。太陽の光をわざと遮る——一見不思議に思えるこの作業は「被覆栽培(ひふくさいばい)」と呼ばれ、玉露や抹茶の深い旨みを生み出す、日本茶の大切な技術です。今回は、その仕組みを畑の目線からお話しします。

被覆栽培とは何か

被覆栽培とは、収穫前の一定期間、茶の木に寒冷紗などの覆いをかけて直射日光を遮る栽培方法です。露地のまま育てる煎茶とは異なり、光を制限された茶葉は、色濃く、やわらかく、旨みを蓄えた新芽へと育ちます。私たちの畑でも、抹茶の原料となる茶葉は収穫前に20日以上覆いをかけて育てています。

被覆栽培中の霧島の茶畑 / Kirishima tea fields under shade cultivation before harvest - 今村茶園

光を遮ると、なぜ旨みが増えるのか

鍵を握るのは「テアニン」というアミノ酸です。テアニンはお茶の甘みと旨みのもとで、根で作られて葉に運ばれます。葉が日光を浴びると、テアニンは渋み成分であるカテキンへと変化していきます。つまり、光をたくさん浴びるほど渋みが増し、光を遮るほど旨みが残る——被覆栽培は、この変化を人の手で抑える技術なのです。

  • 覆いによって光合成が制限され、テアニンからカテキンへの変化が抑えられる
  • 葉は少ない光を求めて葉緑素(クロロフィル)を増やし、深い緑色になる
  • 結果として、渋みが少なく、甘みと旨みの濃い茶葉になる

玉露・かぶせ茶 ——覆い方の違い

被覆栽培から生まれるお茶には、大きく三つの種類があります。玉露は約20日間以上しっかりと覆って育てた最高級の煎茶。かぶせ茶は1〜2週間ほどの比較的短い被覆で、煎茶と玉露の中間のような味わいです。「覆い香」という香り

被覆栽培のお茶には、青海苔にも例えられる独特の香り「覆い香(おおいか)」が生まれます。これは被覆中の茶葉の中で香気成分が変化することで生まれるもので、玉露や抹茶を口に含んだときに感じる、あの海のような、深い緑の香りの正体です。旨みだけでなく香りまで変える——覆いは、お茶の個性を根本からつくり替える技術だといえます。

私たちの抹茶と被覆栽培

今村茶園では、被覆栽培を香りと旨みの土台と考え、抹茶の原料となる茶葉は春の一番茶のみを使っています。伝統の栽培技術と新しい製造技術を組み合わせたhybrid MATCHAも、その出発点にあるのは、覆いの下でゆっくりと旨みを蓄えた霧島の茶葉です。栽培から製造までの流れはお茶ができるまでで、霧島という土地については霧島茶とはでもご紹介しています。

よくあるご質問

Q. 被覆栽培のお茶は普通の煎茶とどう違いますか?
渋みが少なく、甘みと旨みが濃いのが特徴です。色も濃い緑色になり、覆い香と呼ばれる独特の香りがあります。

Q. 抹茶はすべて被覆栽培ですか?
本来の抹茶は、被覆栽培した碾茶を挽いたものです。被覆の期間や方法は産地や作り手によって異なります。

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